じわりと涙が浮かんだ時、両手を広げたリタがエミリーの前に立ち塞がった。
「ちょっと待ちなさいよ。納得いかないわ! エミリーが盗むのを見たっていうのはいったい誰?」
「我々には守秘義務がある。そんな重要なことをこの場で言える訳がなかろう」
進み出てきた団長に半笑いでそう言われ、リタは悔しそうに顔を歪めた後、びしっとエミリーの真後ろに立つ騎士団員を指さした。
「そう。それじゃああなたに聞くわ。どうして中身を確認もしないで入っているものが盗まれたブレスレットだって分かったわけ? まるで何が入っているのか最初から知っていたみたい」
エミリーの後ろにいたのはクローゼットから黒の布袋を見つけた人物で、彼は怯んだように視線を泳がせる。
しかし、再び騎士団長が威圧的に告げた。
「お嬢さんの見間違いだ。私の優秀な部下はきちんと先に中身を確認している。だろう?」
団長から問われ、騎士団員が「もちろんです!」と返事をする。
「私はちゃんと見ていたもの。見間違いじゃないわ!」
リタはムキになって言い返したが「くだらない」と一蹴され、何も言えなくなる。
「歩け」と後ろから背中を押され、エミリーは再び廊下を歩き出す。


