「レオン王子の一方的すぎる片想いだったことにも驚きだが、エミリーもやっぱり只者じゃないな。グラント国で生まれ育ったのだから、レオン王子は美形で世の女性の憧れ的存在だと言うことくらい聞いているだろうに。普通なら満更でもない顔で話くらい聞くだろ」
「……この後城まで連れて行き、王子と引き合わせる予定でしたのに、テド院長が余計な発言をなさるから」
侍従長はため息混じりでぼやいてから、「そろそろ城に戻ります」と告げる。
テド薬師長も「えっ、俺が悪いの?」と慌てて腕を解いて、ソファーから立ち上がる。
扉へ向かう侍従長の斜め後ろにフィデル副団長がつき、こそりと話しかける。
「彼女、オレリアにも余計なことを吹き込まれていますから。レオン様は先にご自分のことをきちんとお話されておくか、または無理にでも予定をあけてここへ来るべきでした」
「さて。王子にはどのように報告しましょうか」
扉の前で足を止め、侍従長はレオン王子が落ち込む姿を想像しながら、宥めるのが大変だぞと小さくため息をついた。
大聖女だけでなく花嫁も断ったことは後悔していない。
しかし、国王様や王子の不興を買ってしまっただろうなと不安に駆られながら三日が経った頃、各教科担任が定期試験に関して口にし始め、エミリーの気持ちも切り替わっていく。


