「まともに話したこともないってことは、レオン王子はエミリーの人柄云々ではなく才能を気に入ったと言うことか。大聖女を妻に娶れば箔が付くからな。可愛いとも言っていたから顔も好みなんだろうけど」
テド薬師長が見解を述べていると、エミリーが納得したようにポンと手を打った。
「なるほど。私というよりは大聖女を御所望ということなのですね。腑に落ちました」
なんせ女好きのレオン様だ。大聖女でありさえすれば誰でも良いとお考えなのかもしれない。エミリーはそう理解し、次の一手を打つ。
「それならやはり早計です。大聖女はエスメラルダになる可能性の方が高いのですもの。今私と婚約してしまったら、レオン様は後々後悔します」
さてどうすべきかと言葉を無くした侍従長を見て、生意気な発言だったかもエミリーは苦さを覚えた。
さすがに印象も悪くなっただろうしと考えた所で、まてよと閃く。
あの娘はダメだと思わせれば、大聖女の話も無かったことになるかもしれない。
好きでもない人の元にお嫁になどいけない。
エミリーは髪飾りに触れて覚悟を決める。
「不敬を承知で申し上げます。私には心に決めた相手がおります! そのため、レオン様の花嫁にとのお話は、ついで大聖女の件も、謹んでお断り申し上げます!」


