花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


侍従長から唐突に飛び出した王子の名前に、エミリーはきょとんとし瞬きを繰り返す。

なぜレオン様が自分を心配してくれているのか。

女好きらしいから、女というだけで誰でも心配してもらえるのだろうかと失礼なことを頭の中で考えていると、侍従長がこほんと咳払いして改まった声音で切り出した。


「お話とは、そのレオン様のことです」

「レオン様が、どうかなさいましたか?」

「エミリー様を花嫁に御所望です」

「そうですか。私を花嫁に……って、はい!?」


まさかの展開にエミリーは唖然とする。

レオン王子が自分を花嫁にだなんて冗談にしか聞こえないのに、侍従長とテド院長から祝福するように微笑みかけられ、エミリーは混乱の渦にのみ込まれていく。


「エミリーおめでとう。大聖樹だけでなくレオン王子にも見染められるだなんてすごいじゃないか」

「テド院長、やめてください! あのレオン王子の花嫁だなんて、おめでたくないですよ。お断りします!」


エミリーはローテーブルに手をつきソファーから腰を浮かせて、テド院長に向かって前のめり気味に主張する。