「わかりました。そういうことでしたらすぐにオレリアをモースリーに呼び寄せ、誠心誠意話し合いをしましょう。聖女の代わりはいても、大聖女の代わりはいませんから」
「そのことに関しても、私は学長と同意見です。大聖樹による選出が行われたのだとして、それは本当に私なのでしょうか。あの場にはエスメラルダだっていましたし、適任なのはやっぱり彼女だと思います。だから私は、その……もう少し様子を見てからでも良いのではと」
勢いに任せて「私は大聖女になんてなりたくありません」ときっぱり言うつもりだったが、侍従長に悲しげな顔をされてしまい、最後はぼかした言い方になってしまった。
折角のチャンスを無駄にしてしまったと後悔するエミリーに、侍従長は恭しく問いかけて、さらりと話を変える。
「十日前に部屋への侵入があったと聞いております。その後何事もございませんか?」
「お気遣いありがとうございます。平気です。騎士団の方々がしっかり警備をしてくれているので、とても心強く感じています」
「それは良かった。それを聞けば、レオン王子もホッとすることでしょう。とても心配しておりますから」
「……レオン王子様が、ですか?」


