花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


侍従長にそう言われ、テド院長は扉へと向かいかけた足を戻し、ソファーに腰掛けくつろぎ出す。


「エミリー様も、どうぞお座り下さい」

「……は、はい。わかりました」


諦めて、言われた通りソファーに腰掛ける。

ここからはどんな話をするのか。いずれにせよ大聖女や大聖樹に関する話だろうと予想し、エミリーは先手を打つべく話し出す。


「私は将来、オレリアのような商売人になりたいと思っています。自分の店を持つことも夢ですし、売り買いをしながらさまざまな国を旅して回るのも良いかなって」


しばらくは弟たちの進学のためにあくせく働くことになるが、すべて落ち着いたらのんびりと旅をしてみたい。

その時、隣に美麗な彼がいてくれたら幸せだ。

頭の中でふたり旅の妄想を繰り広げ、幸せいっぱいに笑みを浮かべたあと、エミリーは落ち着いた声音で自分の事情を説明する。


「先ほど学長が言った通り、私はオレリアの援助を受けてエトリックスクールの薬師クラスで学んでいます。卒業後、店で働くという約束も交わしています。だから、薬師クラスから聖女クラスへなんて話はオレリアなしでは進められません」