「僕はできればここで働いてほしいと思っています」


純一の手が春菜の手を包み込んだ。


その目は真剣そのもので、社交辞令でもなんでもないことがわかった。


春菜はすぐに反応することができずに視線をさまよわせる。


「でも私、ひどい女ですよね？」


酔っ払ってコケて、気絶して記憶を失う。


こんな女他にはいないだろう。


しかし純一は首をかしげた。


「あなたはとても魅力的な女性です。だからこそ黒田さんや田島上司といった人たちが近づいてくるんだと思います」


どこまでも優しい純一に目の前が滲んできた。


溢れ出してしまいそうになる涙を必死に押し込める。


「こんなに沢山迷惑をかけてしまったし……」


「それなら、働いて恩返しをしてください。今までのようにここに暮らしながら」


「わ、私なんかでいいんですか？」


「もちろんです」


フワリと包み込むような笑顔を向けられて、ついに我慢できなくなって涙が落ちた。


それは純一の手の甲を濡らす。


「私、ここにいていいんですか？」


「はい。むしろ、ずっと僕の隣にいてほしい」