「な、なんだよ、それ」



わわわっ。

「ご、ごめん」



「やられたらやり返す、目には目をって奴?」



「そんなつもりじゃなかったんだけど…… 
 手が勝手に動いちゃって……」



「反射的かよ?」



「痛いよね? 鞭光君のおでこ。
 本当にごめんね」





斜め上に伸ばした、私の手。



痛そうに赤く染まる、彼の額にたどり着く前に

ゴツゴツした指に捕まれた。



いきなり伝わってきた、鞭光君の手の平の熱。



しかも


見上げた私の視線のすぐ上に

彼の優しい瞳が揺れていて



みんなに見られているってわかっているのに

ドキドキで視線をほどけない。




私の腕が引っ張られ


私の上半身が、鞭光君の胸に向かって傾いて



崩れる前に、なんとかバランスを保った私の耳元に

鞭光君の顔が近づいて来て



彼は私の耳に

誰にも聞こえないくらいの

小さなテレ声を吹きかけた