「わうくん、いくよ」

「あっちむいてほい!」


わうくんは、あっちむいてほいがとてつもなく下手です。


「ふふっ…わうくん」

「わたしの手と違う方向に向かなきゃいけないんだよ?」


「そ、そうだよねっ」


わうくんは、


「じゃぁもう一回ね」

「あっちむいてー…」


「ほい!」


わたしの指を追いかけちゃう変な癖がある。


だから無意識にわたしの指を追いかけて、あっちむいてほいに全敗中なんです。


「ふっ…くっ…わ、うくん」


私はこれが面白くて仕方なくて、


「……なんで負けちゃうんだろう…」


自分の癖に気づかずにシュンとしてるところが可愛くて…


「へへっ」


ぎゅっと抱きしめたくなる。


「わっ…もこちゃん?」


ぎゅーっと抱きしめて、ゆらゆら揺れると、わうくんも私の背中にそっと触れた。



「俺からハグするときも幸せだけど、」


「もこちゃんからのハグは、もっと幸せだね」



優しい低音が耳をくすぐった。


「…そうなの?」

「そうだよ」


ふたりで顔を見合わせて笑う。


いつも、わうくんからハグしてくれるから分からなかった。


幸せだなぁと思う、もこなのでした。