「ある同級生に目をつけられてね…。いじめはかなり陰湿で、私も妻もなかなか気づいてやれなかった。その結果弥生は不登校になったんだ」


中学生二年生の春から何故か無視されるようになった。
最初は気にしてなかった。

けどいじめはどんどんエスカレートしていった。

物がなくなったり、机や黒板に落書きされたり、階段から突き飛ばされたり…。
悪口なんて毎日で、私はひとりぼっちになった。

ある日トイレに入ったら、思いっきり水をかけられた。
季節は夏だったけど、着替えの体操服を隠されてそのまま家に帰った。
長時間濡れた格好でいた私は風邪を引いた。高熱がでて数日学校を休んだ。

休んでみると、学校に行くことが億劫になった。

もう行きたくない。嫌だ。

そんな感情がぐるぐる回って、部屋に籠るようになった。


「でもね。勉強は家でもずっとしていたんだ。だけど、私たちは何もできなかった。転校させてやることも…、何もね。出来た事と言えば、不登校の理由を学校側に説明しにいった事だけ。中学三年生の時はようやく保健室登校ができて私も家内もそれは喜んだよ」


クラス替えしたと分かっても、どうしても教室には行けなかった。
怖かったんだ。

だから保健室にしか行けなかった。

それでも二人は喜んでくれた。


「だからね。弥生と人生を歩むなら、弥生を必ず守ると約束してほしい。頼めるかな?アキくん」


そう問いかける父に、アキさんは真剣な顔で「約束します」と力強く言ってくれた。