「見てたから大丈夫だよ」


優しく茜ちゃんが口を開く。

見てた?
あの場面、やっぱり見られてたんだ…。

・・・二人の気配なんて全く感じなかったのに。


「森さんもやるよね?額にちゅーって!!」
「それはそう。最後にでかい事すんなって話。こっちは婚約者がいる女だぞって」
「そーそー!!」


ガッツリ見られてた。

なんか全部知られてるとなると開き直れる。
いい具合にお酒が入っているからか、いつもはいわない素直な気持ちを二人に話し始めていた。


「あのキス…、なんか不貞行為を働いたみたいで罪悪感がすごくて…、もう…、どうしたらいいのか…!」
「弥生ちゃん真面目だもんね」
「でもそれぐらい気にしなくていいと思うよ!」
「茜ちゃん…!」
「だってあれは確実に森さんが悪いし、婚約者さんに黙っててもいいと思うよ!もしバレたとしても私たちが婚約者さんに説明してあげる!ね!千景先輩!!」


━パァン。
茜ちゃんが千景先輩の背中を叩く。

いい音なったなぁ。


「いった…!…はいはい。説明してあげるよ。だからそんな心配しなくていいよー」
「それでも心配だったら正直に話してスッキリするっていう手もあるけど、話を聞いてる限り弥生の婚約者って嫉妬深そうだから黙ってるほうが吉だと思うよ!」
「そうだねー。私もそう思うかな」


二人からの慰めに私の気持ちも軽くなる。

そうだよね。無理に話す必要はない。
もし罪悪感で耐えきれなくなったら言おう。

そして何かあれば二人に説明してもらおう!!

そう決めた後は吹っ切れたのか、三人で中身のない会話をしながら終電ギリギリまで楽しく飲んでいた。