非常階段にいる小林を見てホッとする。
流石に化粧室に行かれてはストーカーまがいな待ち方になってしまう。

覚悟を決めて話しかけると、少し驚いている小林さん。

それはそうだ。
一人になりたくて非常階段に出たら、そこまで親しくもない男に話しかけられたんだからな。

でも思いは止められない。

彼女が非常階段から出るそぶりをした途端、扉ごと腕の中に封じこめた。
これがゲームで見たことある壁ドン。
まさか俺がすることになるとはな…。

少し恥ずかしく思いながらすぐに謝る。
けど近くから小林さんの香りがする。

それだけで頭が可笑しくなる。


やっぱり…、好きだ。


その気持ちだけで頭がいっぱいになる。
邪心から体制を変えたくなくて「ごめん…」と謝る。

その体制のまま気持ちを伝えることにした。


「小林さん、俺…、小林さんの事ずっと好きでした…!」


思いのたけを小林さんに。


「今言われても困るのは理解してる。…うん。それは、本当にごめんね」


小林さんの肩がかすかに動く。
俺のことを意識してくれてる。


「でもどうしても気持ちだけは伝えたかったんだ。色々考えた。絶対俺が告ったら迷惑をかける。少なくとも結婚をする女性に対してだから…。でも、初恋だったんだ!だからどうにか一区切りつけたくて…」


ゆっくりと小林さんがこちらを見る。


「だから…、俺の事ちゃんと振ってください」