「それで?何があったんだ?」


ソファに座り次第、俺はすぐに弥生を問いただす。
いつもならもっと優しく聞けるのに、今はそんな余裕がない。


「アキさんが外出してそんなに時間は経ってないと思う。…急にノックされたの」
「それがシキなのか?」
「うん。最初は誰か分からなくてドアを開けなかったんだけど、シキさんの声がしたからドアを開けて部屋の中に入れたわ」
「それで?」
「…正直に言うわね。…嘘をつきたくないから」
「あぁ」


弥生は覚悟を決めたのか俺の手を握り話し始めた。


「最初はいつも通りだった。けど途中から雰囲気が変わったの。私のことを”義姉さん”とは呼ばずに”弥生さん”って…」
「…怖くなかったのか?」
「怖かったよ。でもそれは最初だけ」
「最初だけ?」
「うん。なんか途中から怖いっていうより、助けてあげなきゃって思ったの。何かにずっと怯えているみたいだった」
「…怯えている?」
「…うん。私ね、そういうのに敏感なの。私も助けを求めていた時があったから」


いじめか…。