「いや、俺は何を考えているんだ」


邪心が出るほど俺の頭は混乱している。
こんな邪な気持ちは水に流して忘れてしまうのが吉だ。


「…風呂にでも入るか」


冷静になるために、俺には一人になる時間が必要だった。

弥生とは初めての営みじゃない。
むしろこの家では何度もした。

この風呂場もその場所の一つだ。

なのに俺はどうして考えてしまう!?
邪心を流しに来たんじゃないのか?


「くっそ…!」


弥生の事で冷静になれた試しなんてない。

プレゼント選びに一喜一憂して、石油掘り当てたばかりの忙しい時間に会いに行き、
そして付き合えた時は弟に話してしまうほど浮かれていた。

結婚だってそうだ。

いい返事を貰えたとすぐさま父と母に連絡をした。

なのにこんな早々に婚約破棄の危機がくるなんて思わないだろう!?


「はぁ…。情けない」


あんなに自宅に着いたら、すぐさま問いただす予定だったのにな。


俺はどうやら弥生には嫌われたくないらしい…。
自己嫌悪するように長風呂をし、そっと風呂場を後にした。