まさか、巧も私と同じこと考えてた? 呆れてたわけじゃないの?

 少し間があった後、巧は私の隣の椅子に座り込んだ。そしてこちらの顔を覗き込む。

「……俺も本当の恋愛に関してはど素人だ」

 
 そんな台詞を頂いた私は、彼の赤面が移った。一気に顔が熱くなって心臓が躍りだす。

 涙は引いてただうるさい心臓に体が支配される。


「……もうちょっと話そうか、俺たち」

「そ、だね……」

「なんか、俺ら始まりが普通じゃないから、戸惑うことも多くて。もっと会話がないといけないな」

「同意します」

 そこまで言うと、巧は少しだけ口角を上げてふっと微笑んだ。そして目の前に並べてあった箸を手に取る。

「まずはその余ってるチキン南蛮二切れをよこせ、俺のものだ」

「え。こんな食べかけ食べるつもり!?」

「だって俺のだろ。てゆうか二人前もチキン南蛮食べるな、太るぞ」

「残したらもったいないと思って」

「連絡しなかった俺も悪い。色々考えてたら携帯の充電切らしてることにも気がつかなくて」

 綺麗な箸遣いで、巧は食べかけのそれらを頬張った。とっくに冷えてるし、美味しいわけがないのに。

 それでも彼は白い歯を出して笑いながら言った。

「めちゃくちゃ美味い」


 子供みたいに笑うその顔があんまりにも反則だった。

 私の脳内にポンと選択肢が浮かぶ。




 ▷(無言で抱きつく)
 ▷(無言で抱きつく)
 ▷(無言で抱きつく)