「おなか、空いちゃってたの…ゆるして…?」
震えた声。私の弱弱ハートにストレートで射抜いてきた。こんなに可愛い「ごめんなさい」を聞かない鬼畜いる?
「…おい陽葵…何してんだてめぇ…」
居たわ…
「獅貴、いいよ別に!私もうお腹いっぱいだし。ね、大丈夫だから」
慌てて宥めると、獅貴は滲み出していた黒い怒気をしまい込んだ。仕上げとばかりに頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める。この瞬間は猫を愛でているみたいで、実は気に入っていた。
鴻上さんが驚いたように放心して此方を見ている。なんとなく言いたいことは分かっているから、私からは何も言わない。
「猛獣使い…?」
それ涼くんにも言われたなぁ…とぼんやり考える。獅貴の先輩ってことは涼くんの先輩でもあるってこと…?やっぱり後輩と先輩は似るものなのかな。
獅貴と鴻上さんは全然似てないけど。むしろ正反対だ。無愛想で礼儀を知らない獅貴と違い、鴻上さんは天使みたいに気が利いて優しい。
これが大人の余裕か…と息を吐いた。

