「紫苑がおれに"あーん"ってしたんだ。
"あーん"だぞ、これはもう結婚だろ」
よく分かんないけどちょっと落ち着け。
「えーいいないいな。僕もしーちゃんに"あーん"されたい。しーちゃんしーちゃん、僕にも"あーん"して?」
「陽葵くん…駄目ですよ、食べ過ぎです…」
そこじゃないでしょ鴻上さん…と苦言を呈しそうになったがグッと堪える。彼は今疲れているんだ。正常な判断が出来ないのも無理はない。
まとも枠(?)である私が、きちんと理解してあげないと。
うんうんと頷く私を、獅貴が微笑ましそうに見下ろしていることには気が付かなかった。
「って、あ…」
ふとオムライスを見下ろすと、そこには"空の皿"が置いてあった。綺麗に何も無い。まだ残っていたはずだが、どうして…?
「あー!こら陽葵くん!紫苑ちゃんのも食べちゃったんですか!?」
流石に早業すぎない?
驚く私の膝に擦り寄ってきたのは、満足そうにお腹を擦る陽葵。うるうると目を潤ませて「ごめんなさい…」と謝る姿に、母性本能が燻られる。

