拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】





「陽葵、鴻上さん」



名前を呼ぶと、二人は同時にこちらを向いて笑いかける。陽葵はキラキラと嬉しそうに。鴻上さんは苦笑混じりに。




「…すみません獅貴くん…色々あってご飯が無くなってしまい…今から作り直すので…―――」




「いい」




「………え?」




え?と私も声に出した。獅貴は上機嫌で私の髪を撫でながら言う。



「要らないから、気にするな」



らしくもなく気遣うようなセリフに、妙な悪寒が走る。いつも傲慢な人間が突然優しくなると、こうも気味が悪いのか。



「え、あ、は、はい……?」



困惑気味に頷く遵を憐れむ。その後ろからひょいっと顔を出した陽葵は、ぱあっと瞳を輝かせて駆け寄って来た。




「しーくん、嬉しそう!しーちゃんに何かしてもらったの?しーちゃん、しーくんに何したの?」




わくわく、そんな効果音が聞こえてくるほどだった。何もしてないけど…と獅貴の方を振り返ると、彼はとても、それはもうとても嬉しそうに微笑んで私を見つめていた。