「…紫苑、嬉しい?」
突然の問い掛けに困惑したが、すぐに微笑を浮かべて頷いた。
「嬉しいよ、まともなご飯食べるの久しぶりだったし」
明るく答えたつもりだったが、獅貴の顔はいまいち晴れない。どうしたものかと逡巡して、一度スプーンを皿に置いて手を伸ばした。
獅貴のサラサラの髪を、優しく撫でる。
「…嬉しいの、獅貴のお陰だよ。
獅貴が私を、嬉しくしてくれた」
猫のように目を細めて微笑んだ獅貴に、胸の内が温かく火照った。彼は私の言葉に嬉しそうに口角を上げて、「…そうか」と呟いた。
「…やっぱり、紫苑が嬉しいと、俺も嬉しい」
静かに囁かれた言葉に鼓動が高鳴る。獅貴の瞳の奥は何処までも温かくて、優しくて、だから高鳴りは一向に収まらない。
見つめ合う今のこの瞬間だけ、時が止まったように思えた。
「―――…んー、おなか、すいた…」
「っ…!」
ぐー…という可愛らしいお腹の音で我に返る。音の方へ振り向くと、むくりと椅子から体を起こして、陽葵が目を擦っていた。

