「…あ、おいしい」
胸の疼きを振り切りるように、半ば勢いで食べたそれはすごく美味しかった。料理が得意ってのは本当だったようだ。この顔で料理上手とか、さぞかしモテるに違いない。
微笑んだ私を見て、鴻上さんは嬉しそうに笑った。
「本当ですか、良かったです…!」
ふんわりした笑顔に見蕩れる。なるべく考えないようにしてたけど、この人の顔すごいタイプなんだよなぁ…。
ほえー…と視線を釘付けにする私を見て、獅貴は何を思ったのか小さく舌打ちをする。
「…遵、俺のも」
俺の飯も作れや、と言うことだろう。それが人にものを頼む態度かね、獅貴くん…。
「…、あー、すみません、すぐ作りますね」
何かを察したように頷いた鴻上さんは、そそくさとキッチンへ向かってしまった。最後の困ったような笑顔に申し訳なくなる。
…よくある事なんだろうな、慣れてるみたいだったし。
「…紫苑」
「…ん、なに?」
ふわふわの卵を崩して口に入れると、そんな私をボーッと見つめた獅貴が呼びかけてきた。

