寒さを誤魔化すように青年に話しかける。
「お腹空いてる?空いてても何もやれないから勘弁してね、ここにはまともな食べ物揃ってないから」
あるとしたら大量のもやしだ、むしろもやししか無い。
私の言葉に素直に頷いた青年は、何故か私の元へ近寄ってきた。
「…お前、寒いのか」
「心配要らないよ、慣れてるから」
痩せ我慢だとすぐに気付いたのだろう、青年は目を細めて私を見据え、突然私の体を抱き締めた。
「…なに、君まさかこれが目的だったの?無防備な私の自業自得だけど、少しは恩感じて欲しかったな」
「違う、お前がこれ以上冷えないようにしてるだけだ」
予想もしなかった回答に目を見開いて、更に強くなった抱擁に戸惑う。
離れられなかったのは、彼の温もりがあまりにも心地良かったからだ。

