もう一度店内を見渡して中を確認すると、『じゅんちゃん』がはっとしたように肩を揺らして私に問い掛けた。
「紫苑ちゃん、でしたっけ?何が食べたいですか、なんでも作れるんですよ、俺」
ふわふわ〜と問い掛けてきた『じゅんちゃん』に陽葵と同じ香りを感じた。この人も天然タイプだろうか、だったら別の意味で面倒なことになる。
言葉に応えようとすると、獅貴がグイッと私の前に壁になるように立ち塞がって『じゅんちゃん』を睨み付けた。
「…俺の紫苑を口説くな、潰すぞ」
「ははっ、やだな獅貴くん。君の大事な女の子に手を出すほど、俺は命を安売りしていないんですよ?」
『じゅんちゃん』の瞳の奥が妖しく揺らめく。色素の薄い焦げ茶の目だ。若干垂れ目気味な容姿が誤解を生みやすいが、実は機敏なタイプなのかもしれない。
「あの…"じゅんさん"?」
恐る恐る話しかける。『じゅんちゃん』があだ名なくらいだし、きっと名前は『じゅん』さんだろうな。そう思って呼び掛けると、前に立つ獅貴がピクリと体を震わせた。

