「紫苑?どうした、可愛い顔して…」



怒ってんだよ。



「…否定してよ。私は獅貴の『モノ』じゃない…」



ふいっと顔を背けてそう言うと、隣からスッと手が伸びてきて、肩を抱かれて抱き締められた。視線を上げて獅貴を見ると、彼は何故か嬉しそうに笑っている。



「あぁそうだな。紫苑は俺の『女』だ、モノなんかじゃない。俺は紫苑の『モノ』だがな…?」



艶やかに言ってニヤリと微笑んだ獅貴に、一瞬見惚れてしまった。そんな自分を振り払うように、フルフルと首を振る。


『女』でもなければ『モノ』でもない。獅貴は"いつの間にか発言"が多すぎる。いつ私たちが付き合うことになった?




「…獅貴くんのキャラが違いすぎて吐きそうです…。
なんですかこれ、二重人格?」



「照れてるしーちゃん、可愛いー」




慄いた顔で後退りながら言う『じゅんちゃん』。


ふわふわ〜と場の空気を読まずに発言する陽葵。


吐きそうなのは私の方だ、と悪態をつきながら、肩に回された獅貴の腕をさり気なく外した。