「あ、新入りさんですか?」
人好きのする笑顔でカウンターから顔を出したのは、20代くらいの美形の男性だった。マッシュウルフの茶髪に爽やかな笑顔。一言で言うと、『今どき大学生』。キャンパスが似合いそうだ。
耳には無数のピアスが輝いているが、不思議とチャラさは無い。ふわふわとした穏やかな笑みに清潔感のある仕草が、好青年に見せるのだろうか。
「あれ、女の子だ」
私の姿を視認して、彼は珍しいものを見るように瞬いた。
「ど、どうも。加賀谷紫苑です…」
年上のお兄さんには弱い。ビクビクしながら名乗ると、獅貴が私の頭をポン、と撫でる。『じゅんちゃん』が驚いたように目を見開いた。
「わぁ…夢ですか、これ。
獅貴くんが女の子に触れてます…」
「夢じゃないよじゅんちゃん。
しーちゃんはしーくんの『モノ』なんだって」
違うよ…!?!?
参ったな。完全に獅貴の言葉が陽葵の脳内にインプットしてやがる。純粋陽葵くんになんてこと仕込むんだ、この男は…。