「あのー…理史さん…?」
「…何です」
疲れ気味に振り返ると、そこに立っていたのは気まずそうに視線を逸らす琥太だった。
じとっと見つめると、ははっ…と乾いた笑いを漏らして眉を下げる。何笑ってんだよ、元はと言えばお前が呼んだせいだろ。
「いやーすんません…
やっぱ頼りになるッスね!理史さんは!!」
都合良いの間違いだろ。
ぐっと怒りを堪えて琥太の横を通り過ぎる。慌てたように俺の名前を呼ぶ琥太、と隠れて様子を見ていた下っ端たち。悪いがお前らの顔は当分見たくない。
仲間の暴走一つ止められないで何が族トップだ。下っ端は腑抜けた奴らばかりだし、幹部もまともと言えるのは涼也さんくらい。
一番肝心な総長は女に堕落して…。
敵対する族に絡まれたら大丈夫なのかこれ、と呆れたが、もう何でもいいかと溜め息をついた。
「…すみません、涼也さん」
虚空に小さく謝罪して、携帯のメール画面を開いた。涼也さん宛に律のことを知らせて、既読が着く前に閉じる。

