「総長が心配してるなら行かないと、安心させてあげないとっ…!」
「………………え?ちょ、待っ」
俺の静止も聞かず、律は嬉々として倉庫を走り抜けて行った。入口までかなり距離があるというのに、超高速だ。光の速さだった。
嬉しそうな律には悪いが、総長は律の心配なんてしてないし、たぶんあの人のことだから存在すら忘れていると思う。
なんなら俺でもたまに忘れられる。
幹部なのに、なんて初めは拗ねたこともあったが、もうそろそろ慣れてきた。あの人は近しい人間とか仲間とか、そういうこと関係無しに、『他人』に興味が無いのだ。
総長に情を求めても時間の無駄だ。
律のやつ、相当あの人に懐いてるみたいだから、会って早々「誰?」とか言われたら悲しむだろうな…。
総長大好き人間のアイツのことだから、その場で自害を選ぶかもしれない。総長の記憶に焼き付く為なら…!!とか言って。
うわ、見える。奴の死に様もはっきりと。

