「…どうでもいい、迷惑なら近付くな」
―――いやそれ、貴方にそっくりそのままお返ししますよ
どう考えても迷惑で近付いて欲しくないのはコイツの方だ。暴れるなら他所でやって欲しい。
だがそれを言ってしまっては、また面倒なことになる。ただでさえ不機嫌な様子の律を刺激する訳にはいかない。
仕方ない、ここは早く場を収める為にも、総長の名前を使わせてもらおう。
「…総長も呆れてましたよ、『またか』って」
実際は呆れても心配もしてなかった。完全にどうでもいいって感じだった。他人事みたいな。
けれどこの嘘は大分コイツに効いたらしい。目を見開くと、律は拳を握り締めて俯いた。流石に言いすぎたか、と後悔していると、勢いよく顔を上げた律が俺を射抜く。
キラキラと、瞳を輝かせて。
「総長がっ、総長が俺のことを考えてくれた!」
いつもは無愛想な律だが、耳としっぽが見えたような気がした。