バイクを最大速度で走らせて倉庫へ向かう。普段は下っ端が集まる程度の場所で、幹部はあまり使うことが無い。


先代までは溜まり場として、下っ端も幹部も全員が此処に集まっていたと聞くが、今は全く逆だ。




それも全て、今の総長がそもそも族に興味が無いという理由が大きい。




さっき下の奴らから送られてきたメールを思い出して憂鬱になる。総長の命令だから仕方無いが、正直面倒だ。"アイツ"は人の言うことを聞かないから。


第一印象としては『総長に似ている』だった。アイツの傲慢さも身勝手さも我儘なところも、見れば見るほど総長にそっくりだ。そのくせ実力は確かなところが酷似して溜め息が漏れる。




「理史さん!こっちッス!助けて下さい!!」




バイクを降りたところで、背後から大声で呼び掛けられる。振り返ると、倉庫の入口から少し出た場所で手を振る琥太(こうた)と目が合った。


近付くと、涙目の琥太が悲痛そうに訴える。



「アイツ何とかして下さいッス!!やばいッスよマジで!近寄ったら死ぬッス!」