だって私何もしてないし。なんなら獅貴に色々尽くされそうで怖い。獅貴が私に何かしてくれても私は獅貴に返すものが何も無いのだ。



「見返りなんて要らない。俺が紫苑に食わせたいだけだ、紫苑が倒れたら俺が悲しい」



そう言って微笑んだ獅貴に、不覚にも胸が高鳴った。もしかしてこの男、本当に私のこと…?とか乙女みたいに考えてしまったけれど、すぐに冷静になる。


そんなはずない、私みたいな可愛くない上に貧乏な女、その内すぐに飽きるだろう。




―――そう思い、少しだけ寂しくなった自分に驚いた。




「…ありがと」



顔を伏せて小声で言うと、獅貴は感極まったように目を見開いて口角を上げた。私の体をぬいぐるみを抱くようにギュッと抱き締めた獅貴は、嬉しそうに答えた。



「紫苑が照れたぞ…!可愛い…!」


「うるさい、そういうの良いから」



らしくない、と思いつつ、照れ隠しで頬に手を当てながら獅貴を宥める。それすらも聞いて嬉しそうに頷いた獅貴に、困ったように微笑んだ。