「紫苑、何が食べたい?」



周囲には目もくれず、私だけを真っ直ぐに見つめて問い掛ける獅貴。流石にもう慣れたので、素直に返事をすることにする。



「……オムライス」



「オムライス?可愛い」



何が可愛いの…?



獅貴の感性は少し分からない。オムライスが好きなだけで可愛いなんて結論に至る理由は一体何なんだろう。なんならラーメンだろうがカレーだろうが、私が言ったら何でも可愛いとか言い出すんじゃないか。


「……」


うわ、浮かぶ…目に浮かぶ…。何を言っても可愛いとか言い出す未来しか見えない。



「しーちゃんオムライス好きなの?
子どもみたい、かわいい」



君が言うか、と即答で思ったが、陽葵は自分の子供っぽい所にコンプレックスを感じていそうなので口を噤む。なんたって禁句が『チビ』だし。



「あの、でもお金は払うよ…?
今日は金欠だから、今度でも…」



奢ってもらう気満々だったが、良く考えたら男に無償で金を払わせるとか最低な女じゃない?と思い至った。