「あの、ごめん獅貴…今ちょっと金欠で…」



「何言ってる、紫苑は金なんて払わなくていい」



思わず「はい?」とガチトーンが出てしまった。無料でご飯が食べられるの?何それ幸せ。でもそんな都合良いことある…?



「…しーくん、しーちゃんは3日ご飯を食べてないの。だから倒れちゃうかも、早くご飯食べさせてあげて…?」



同情気味に私を見ながら獅貴にそう言う陽葵。心配してくれてるんだろうけど、私の中では羞恥と絶望が大きい。やっぱり3日ご飯を食べないって普通じゃないんだなぁ…。


黒マスクくんも目を見開いて絶句している。



「…駄目ですよ、ご飯はしっかり食べないと―――」



「あーほら理史?早く行った方がいいんじゃない?」



何やら長々と話し出しそうな黒マスクくんを宥めた涼くんに首を傾げる。意外にお母さん属性なのかな、黒マスクくん。



ぼんやり考え込む私を後目に、彼は一人視聴覚室を出て行った。その視線の中に心配そうな色を滲ませていた辺り、やはり彼は母性本能を持つタイプの優しい青年なんだろう。