それにいち早く気が付いた陽葵が、私の腕の中から抜け出して黒マスクくんに駆け寄っていく。
「りーくん、りーくん、どうしたの?」
駆け寄り方も話しかける時の口調も完全に女子だ。秒で負けたなって思った。
やっぱり可愛いは男女共通。可愛い男に可愛くない女は勝てないってこと。
そんな下らないことを考えていると、黒マスクくんが画面から視線を上げて目を細めた。その視線の先は陽葵、やけに優しげな瞳を見るに、黒マスクくんは陽葵に甘いのだろう。
「…あぁ、下の奴らから少し…」
そう言って動き出した黒マスクくんに、涼くんが緩んだ頬を引き締めて無表情で問い掛けた。
「……またアイツか?」
「…らしいです」
"アイツ"というのが誰なのか分からないけれど、二人が話していることはさっき言っていたanarchyに関係があるんだろうか。
だとしたら私が口を出すことじゃないな、anarchyが何なのかもそもそも分からないし。

