「……チッ……くだらねぇ、俺は面倒くせぇから帰る」
「あ、おい禅!」
苛立たしそうに室内を見渡した金髪くんが、突如ため息交じりにそう吐き捨てる。
視聴覚室の出口に向かう彼を慌てて呼び止めた涼くんだったけど、それも聞き入れられることはなかった。振り向きざま、彼が私を不満そうに睨んだ。
「……おい」
低い声にビクッと肩を震わせると、彼は一瞬ためらうように表情を歪ませて、今度は獅貴に視線を向けて言った。
「…獅貴、お前がその女どうするつもりなのか知らねぇけど、俺には近付けんなよ」
「近付けるつもりは更々無いが」と無表情で呟いた獅貴に苦笑して、私は無言で部屋を出て行く金髪くんを見つめた。
彼が居なくなった教室内は異様な重暗さに包まれて、私は居心地の悪さに身を捩る。
「ごめんなさい…私、その…」

