「駄目だ」


「……え?」


「おいシキ!!独り占めは許さないかんな!!」



私の体をギュッと抱き締めて低く呟く獅貴。


不安定な体勢で目を瞬かせた私を見ると、獅貴は私を抱いたまま引き寄せて膝の上に乗せた。

頬を染めるクラスメイト達から視線を逸らしながら、横抱きで私の体を抱える獅貴をキッと睨む。



「ちょっと獅貴!恥ずかしいから下ろして!」


「嫌だ。紫苑を盗られたくない」



また子供みたいな……。


ガックリと肩を落とした私を同情気味に見た涼くんが、苦笑して呆れたような声で獅貴に言う。


「分かった…じゃあもう抱いたままでいいから来い。アイツらお前のこと心配してたんだから、せめて顔は見せてやれ。紫苑ちゃんにも会いたがってる」


ぐっ…と押し黙った獅貴を見上げる。


涼くんの言葉に珍しく逡巡した素振りを見せた獅貴は、嫌そうな顔をしながらも私を抱えて立ち上がった。


所謂お姫様抱っこと言われるそれに、慌てて手足をバタつかせる。