「…俺を嫌うな。紫苑が嫌がること絶対しないって約束するから…」
獅貴が落ち込んだ空気を纏って弱々しく囁く。
しゅん…と効果音が聞こえてきそうな勢いだった。垂れ下がった子犬の耳が確かに見えた(幻覚)
「わ、分かった分かった…。分かったからとりあえず離れて」
すごいナチュラルに抱き締め続けてるけどいい加減離せ。自覚したら急に恥ずかしくなってきた。
「このまま死ぬまで抱き締めていたい」
怖いなぁ…もう…。
「そういうのいいから。ほら早く離れる…」
ぐぐ…と獅貴の体を押す。
嫌がることをしないと宣言した手前、強引なことは出来ないと思ったのだろう、案外素直に言うことを聞いてくれた。
「…手、繋ぐ」
「えぇ…?」
なんだろうな…常に誰かに触れていないと落ち着かないのかなこの男は…。
しかしここで手を繋がなかったら一歩も動きそうにない。デジャブを感じながらも差し出された手を取った。

