「ひっ…あ、あの…獅貴さん…?」
鬼のような形相。彼はとても怒っているようだった。
思わず悲鳴を上げて名前を呼ぶと、獅貴は無言で私を抱き締める。
まるで、自分の体温や香りを、染み込ませるように。
「…紫苑、こんなに男の匂いを纏って、昨日は一体何をしていたんだ…?」
男の匂いって何…!?
そういうの普通分かるものなの…!?
それよりもマズい、明らかに誤解している。
いや、獅貴は別に私の彼氏でも兄でも父親でもなんでもないので誤解されようがどうでもいいが、そんなことより恐怖が先に来てしまう。
なんで怒ってるのか知らないけど、恐らく獅貴は昨日私が男と"素敵な夜"を過ごしたとでも思っているのだろう。
全然状況も獅貴の怒りも理解出来ないが、ここはとりあえず鬼の怒りを宥めるのが先だ。
「し、獅貴…?違うよ?男じゃなくて、男の子、子どもだよ…!」
「子ども…だと…?」

