「えーっと、今から行ってもまだ早いと思うけど、どうする?行こっか?」
「あぁ、行こう。今は人も少ないだろうし、寝起きの可愛い紫苑を見られる心配も無いからな。寝癖付いてて可愛すぎるしな」
本当に、この、男は……。
何度も繰り出される甘いセリフにうんざりしながらも、なんとか「そうだね…」と苦笑する。
寝起きの私を見られる心配ってなんだよ。誰得だよ私の寝起きなんて。
「……。…?」
私の寝癖を直そうとしたのか、獅貴が微笑みながら腕を伸ばして近付いてくる。
けれど、その手が髪に届くことは無かった。
獅貴は怪訝そうに眉を顰めて、直後一気に距離を詰めて私の髪に顔を埋めた。
「うわっ…なに急に…」
「…おい、なんだこの匂い」
不機嫌な低い声。
ビクッと肩を震わせて体を固めると、獅貴はゆっくりと顔を上げた。

