「…しーちゃん、僕、もう行かないと」


私の準備が終わったのを確認して寂しそうに言った陽葵。

一度考えて、アパートの入り口まで見送ることにした。


私がついて行くと、陽葵は案の定嬉しそうに笑う。



「嬉しい…ありがとう」



明るくなってきた外はまだ肌寒くて、それでも陽葵の笑顔を見て体はすぐに温まった。


胸の前で小さく手を振って歩き出した陽葵に、私も片手を上げて応える。


見えなくなるまで見送ってから、静かにアパートの裏に移動した。



「…これ、このままで大丈夫かなぁ…」



陽葵が倒れていた場所、そこには大量の血が固まっていて、パッと見殺人現場にしか見えない。

やっぱり全部拭いて証拠隠滅しかないなぁ…と息を吐くと、背後から足音が聞こえてきた。