その妙な違和感は、寝る時には既に消えていた。
とても嬉しそうな笑顔で抱きついてくる陽葵と、安っぽくて狭い布団に二人で横たわる。
体を密着されて初めて気が付いたが、陽葵は中々いい体つきをしていた。
小柄に見えてしっかりとした筋肉、小学生や中学生にしては、かなり鍛えている方だろう。
「…しーちゃん、しーちゃん」
「ん?どうしたの?」
服の裾をくいくいと引っ張って名前を呼んでくる陽葵に微笑む。
陽葵は私の胸に顔を埋めて、猫のように擦り寄ってきた。
「…しーちゃん大好き。僕は、しーちゃんのもの」
「…うん?私も大好きだよ。でも陽葵は私のじゃないかな」
子ども特有の舌足らずなあれだろう。
深い意味は無いはずだ。子どもは純粋だから、信頼したり好意を抱く相手に全てを委ねてしまうものだから。
ここは年上として、しっかり教えてあげないとな。
なんて思ったのに、陽葵は何故かとても悲しそうに、傷ついたように顔を歪めて涙を浮かべている。