儚げな微笑。
「そんなことない。偉いよ。お友だちも、きっと君のこと誇りに思ってる。君は優しくて、とっても強いね」
そう言うと陽葵は僅かに目を見張って、ペットボトルを傍らに置くと、突然私に抱きついてきた。
肩に埋められた陽葵の頭を柔く撫でながら、空いた片方の腕を背中に回す。
「…ありがと、しーちゃん。しーちゃんでよかった。僕"も"しーちゃんが好きになった」
陽葵のセリフに微笑んで、子どもの純粋な気持ちは可愛らしいなぁと悠長に考える。
その言葉の違和感には気付かないまま。
「…しーちゃん、今日はここにいちゃだめ?出ていかないと、怒る…?」
不安げに揺れる瞳に庇護欲が掻き立てられる。
まだ子どもで、怖い目にあった直後なのだ。一人で帰るのは辛いだろうし、なにより動くにはまだ早い。
…仕方ない、よなぁ。
「怒らないよ。一緒に寝ようか、怖いなら抱き締めてあげる」
嬉しそうに微笑んだ陽葵は、私の背中に抱きつく腕の力を強めた。
どことなく、子どもとは思えない力で。

