「…そっか、君が紫苑。やさしい人…」


君"が"というのに違和感を感じたが、彼の微笑みの前には癒しの方が勝ってしまった。

頬を緩ませて思わず彼の頭を撫でる。


「…しーちゃんって呼んでいい…?」



可愛いかよ。



「もちろんいいよ。…それより、君はなんでそんなに怪我をしてるの?何かされてるなら…」


気持ちよさそうに目を伏せる陽葵に和みながら、一番気になっていたことを問いかけた。

陽葵はぎこちなく苦笑しながら、恥ずかしそうに頬を染めた。


「…僕のお友だちが、怖い人に怪我をさせられちゃって、それで僕、許せなくて、その人たちに会いに行ったの。お友だちに謝って、って…」


静かに紡がれる優しい言葉たちに、私は何も言わずに耳を傾ける。


「…そしたらその人たちが笑って、どうでもいいって言ったの。僕は、その人たちに叩かれたり、蹴られたりして…頑張ってやり返したけど、こんなにやられちゃって…。情けない、よね…」