彼の怪我にも既視感を感じた。
獅貴と同じだ、全体的な怪我の量は多くて重症に見えるのに、個々の傷に深いものは無い。
…まさかね、と脳内に流れる嫌な予感を振り払って、少年の手当てを素早く済ませた。
「君、喉は乾いてない?大丈夫?」
騒がしさを感じさせないように、なるべく小声で耳元に問いかけると、少年は水分を求めるように私に腕を伸ばしてきた。
その様子に微笑んで傍らに置いてあったペットボトルを差し出す。
寝かせていた体を起き上がらせて、彼は水をグイッと勢い良く飲み切った。
見た目に反して良い飲みっぷりである。
「…ありがと…」
ふんわりと笑って礼を言ってくる彼に首を振る。
本当に可愛らしい少年だ。家族もさぞ心配しているに違いない。
「…僕、陽葵っていうの。君は…?」
きょとんと顔を傾けて聞いてくる仕草に胸がほんわかと和む。
「紫苑だよ。よろしく陽葵」
私が名乗ると、陽葵は何故か驚いたように目を見開いて、それから嬉しそうに微笑んだ。