しゅん…と肩を落とす獅貴の頭を撫でると、同時にBARの方から足音が聞こえてきた。二人分の足音だ。
「―――シキ、紫苑ちゃん」
「涼くん」
曲がり角から顔を出したのは、困ったように笑う涼くんだった。そしてその片手には首根っこを掴まれた陽葵が…って、何それどういう状況???
しかも陽葵の顔は膨らんでいる。正確に言うと、プクッと頬がリス状態だ。正直に言おう、めっちゃ可愛い。やっぱり陽葵は可愛いなぁ…女の私より可愛いってどうよ…。
「遵さんがご飯作ってくれたんだ。お腹空いてるかなって…ごめんね、取り込み中だった…?」
「ぅ、あ、いや全然!大丈夫!」
困ったような笑顔はその所為か。どうやら私たちが何を話していたのかバレバレのようだ。まぁこの状況だし分かっちゃうよね。
ここでの用は済んだから、本当に大丈夫なのだが…。むしろ涼くんたちが来てくれて助かった。物凄くいい所に来てくれた。あのままどう事態を動かすか決めあぐねていたから。
「ほら獅貴、行こう?」
「っ……ん、」
獅貴の手を掴んで歩き出す。私から手を繋がれることが予想外だったのか、獅貴は驚いたように目を見開いて体を震わせた。けれどすぐに頷く。
大人しく言うことを聞く姿は可愛げがあるな…と思わず微笑んだ。

