こ、これが…!?これが噂の顎クイか…!?!?と状況を忘れて興奮する私。実は少女漫画好きな乙女なのだ。こんな情報暴露したくなかった。
「ちょ、ちょっと待っ…―――」
「―――…待たない」
視線が絡み合う。さっきの会話で一体何が彼のスイッチを押してしまったのか。獅貴の瞳は熱っぽく染まって、表情も獰猛な獣のようだった。
スッ…と音もなく静かに近付く距離。目前に獅貴の顔が現れて、経験なんて何も無いが、本能的に瞳を閉じた。ギュッと強く。あぁここは閉じなきゃなって、比較的冷静な脳で。
「―――…」
声すらまともに出なかったのは、半ば放心状態だったからだ。何かが唇に触れたなってくらいの、軽い感想を抱いただけ。
「…紫苑」
「………」
頭上から聞こえる獅貴の声。何故頭上からなのかと言うと、唇を離したその瞬間、私が光の速度で顔を逸らしたからだ。下に。思いっきし下に。
降ってくる声は優しい。優しくて、穏やかだ。こういう時ってどういう反応をするのが正解なんだろう。にこやかに笑えばいいのかな。でも顔を上げること出来ないし。真っ赤だから。
「…!!」
うわこれめっちゃ恥ずい。ていうかなんでこんな空気になったんだっけ?考えたら謎すぎる。告白ってこんなんでいいの?私たちは付き合ってる…ってことでいいのかな…。

