「うん、好き。獅貴が好きだよ」
ふわっと微笑んで答えると、忽ち獅貴の顔が泣きそうに歪む。「紫苑…っ」と縋るような声で名前を呼ばれると、胸がギュッと締め付けられるような感覚に陥った。
強く腰と背中を抱いていた腕の一方が離れて、その片手が私の頬に移動する。なんだ…?と困惑した次の瞬間、耳元で獅貴が囁いた。
「紫苑…俺今すげぇ…紫苑にキスしたい」
「っっ…!!」
だから!!何でそういうことを軽く言うかなぁ!!と少し憤る私。やっぱり獅貴は天然だ。イケメンの天然記念物だ。"こういうこと"には熟れてそうなのに、意識的には無意識なのだ。
ボワッと全身が熱くなる。きっと顔は真っ赤だ。暗いからいっか、なんて楽観的なことを考えそうになったが、これだけの至近距離なら顔は見られているだろう。
「…そ、そんなこと言われても、分かんないんだけど」
「っ……!!」
言ってから後悔した。この言い方じゃ恋愛経験皆無なのがバレてしまうじゃないか…!だってキスしたことなんて無いんだから仕方なく無い…?
獅貴が息を呑む気配がして、咄嗟に俯こうとした。した、が。それより先に獅貴の長く無骨な指先が顎にそっと添えられる。
「………!?!?」

