拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】




「俺は勝手に居なくならないし、喧嘩だって、誰も俺に勝てない。少なくとも、紫苑が俺を失うことは無い」



呆然…と言うより、この場合放心か。彼の絶対的な自信を帯びた言葉に目を見張った。例外なんてものは無い、有り得ないとでも言うような、傲慢で自信満々な彼らしい言葉。


けど勝気な表情は浮かんでいなくて。私に向けられたそれは、酷く柔らかで優しい。穏やかな笑みだ。




「紫苑は恐怖を感じない。俺がそれを証明する」




…出来れば、紫苑の隣で。悪戯っぽくそう語った獅貴に瞳を数回瞬かせて、そして直後、思いっきり笑う。どこまで言っても、最後まで獅貴は獅貴だ。



「…ん、ふふっ…そっか」


「っ…可愛い」



柄にもなく口元に手を当てて、目元も和らげて微笑んでしまった。その姿を見た獅貴が心臓の辺りを強く抑えて嗚咽を漏らす。


力強く吐き出された「可愛い」に、何かが急激に冷めた。なんで最後にそんな残念なこと言っちゃうかな…。



「はぁ…まぁいいや」



無駄に緊張感のある場というのもアレだ。ちょっとくらいいつもの空気を混ぜても良いよね、普通に照れくさいし。


未だ心臓を抑えて悶えている獅貴を苦笑して見つめる。今から言う言葉を、果たして噛めずに言い切ることが出来るだろうか。不安だけれど、一歩進む為には言うしか無い。