「――…やっぱり、俺は紫苑が好きだ」
どこか気の抜けたその声は、まるで白旗を揚げるように楽観的だった。諦めを認めたみたいな、もう良いのだと降参するような。
その瞳には相変わらず嘘なんて無くて、ただ真実だけを込めたみたいに輝いている。虚言も誤魔化しもそこには無い。心の中に想ったものを、直感で吐き出したようにも思えた。
「………」
あの日、思いを告げられた日。恐怖を感じて、不安が心を支配して、絶対に無理だと決めつけた。他人からの好意が、苦手で。
その想いを受け取るのが怖いのは、数日思い悩んでしまうくらい落ち込んだのは、苦手という理由だけじゃ無いはずだ。一番はきっと、大切だから。失いたくないからとか、そういうこと。
今は、どうだろう。
「…っいや、良いんだ。ちょっと待ってくれ、まだ、言いたいことがある」
言葉を返そうと口を開いた矢先、獅貴がそんな私を止める。片手を軽く胸の前に挙げて、良いんだと口にする。
「…今日のことも、謝らせてくれ。ANARCHYの事情に紫苑を巻き込んで、本当に悪かった…」
頭を下げる獅貴。気にしてないから、もう大丈夫だから。そう言って安心させてあげたいのに、どうしてだろうか、言葉が出ない。
その代わり、何故か目頭が熱くなっていく。

