拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】




真っ暗な路地を進んで、時間が経つのは早いなと逃避気味なことを考える。けれど今日は本当に早かった。濃い出来事が一遍に起こりすぎなのだ、少しくらい休ませてくれても良かったのに。


高校に入学してから…と言うよりは、ANARCHYの皆に出会ってからか。中学までとは全く違う生活に変わってしまった。


…でも、悪い気はしない。むしろ以前よりずっと楽しい。




「―――…紫苑」




少し先で立ち止まった獅貴が振り返る。雑居ビルやら何やらで囲まれた狭い路地の真ん中、月明かりでもあったら雰囲気が作れたのに、なんて要らないことを考える。


微妙な時間だから仕方ないか、と苦笑する。獅貴と正面で向き合ったが、心臓が有り得ないくらい音を立てて煩い。緊張し過ぎだ、自分で言うのも何だが。



「……うん」



もっと言うことが…と言うより、多分私から切り出さなければならない話なのに。獅貴に話の出だしを頼って申し訳ない気持ちになった。



「…その、何度も言って、悪いんだが…」



遠慮がちに切り出す獅貴。いつもの積極的な姿はそこには無い。ただ、チラチラと数秒感覚で向けられる視線が、彼が珍しく気を遣っているのだと教えてくれる。


肩は僅かに落とされて、眉も下がっている。今から言う言葉に、自信が無いみたいに。