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それから私たちは、鴻上の淹れてくれたコーヒーを飲みながら、のんびりとしていた。ふとあたりを見回すと、未星くんと帆乃くんも、さっきより表情が和らいでいる。

陽葵…は寝ている。涼くんは携帯を弄って…なんかもう自由だ。律も珍しく寝ていた。今日色々あったから疲れたんだろう。


「―――…紫苑」


「…、…獅貴…」



ボーッと皆を見渡していると、横から控えめな声で呼び掛けられた。そこに立っていた獅貴は真剣そうな顔で私を見ていて、思わず背筋が伸びる。


周囲の皆は私たちを包む異様な空気に気が付いていない。椅子の音をなるべく立てないように、静かに立ち上がった。



「…話がある、今いいか?」


「…うん」



私も獅貴とは話したいことがあったから丁度いい。それにお互い、きっと話そうとしていることは同じだ。


獅貴がBARの玄関の方へ向かうのを見て、やっぱり二人きりで話すことだよなと苦笑する。何とか着いていこうと足を動かすが、その時手が微かに震えていることに気付いた。緊張しているのは、私だけだろうか。



「……足元暗いから、気を付けろ」



獅貴の言葉に俯いていた顔を上げ、開いた扉の外を見上げる。


今日のことが起きてからどれだけ時間が経ったのだろう。気付けば夕日は落ちていて、空は暗い色に染まっていた。



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