「僕はずっと、兄さんに認められたかった。けど兄さんは僕を嫌ってるから…何とかしないとって、必死で…」
「待って帆乃、俺は帆乃を嫌ってないよ…？」
慌てたように口を出した未星くん。「へ…？」と首を傾げた帆乃くんは、気を遣わなくていいよ、と寂しそうに微笑む。
未星くんはますます顔に浮かべた焦りを強めて、俯きがちに肩を落とした帆乃くんの背中を撫でる。顔を覗き込んでふわっと笑った。
「本当だ、帆乃。寧ろ俺がお前に見せる顔が無くて…。お前も俺を嫌ってるだろうって、顔も見たくないだろうって…だから帰らなかった」
驚愕に目を見開く帆乃くん。賢い頭を持っているくせに、こういうことには疎いのか。人の感情には鈍感らしい。
「そ、そんな…だって、僕に冷たかった…！」
「あぁ…あれは…。俺がANARCHYの幹部だからって、帆乃に嫌な目が向けられてただろ？だから巻き込みたくなかったんだ」
帆乃は何も関係無いって、周りに分かって貰いたかった。そう言う未星くんに、帆乃くんは顔を上げて泣きそうに表情を歪める。瞳が潤んだのを見て、未星くんは困ったように微笑んだ。
